2013年6月22日土曜日

GPS, GNSS ロガーの比較(その1):GPS ログの比較(その4)

今回は GPS ログの比較(その3) の続きの投稿である。
また,この続きとして GNSS/GPS ロガーの比較(その2):GPS ログの比較(その5)というのを書いた。

 GPS ログの比較第4弾である。 今回4種類のロガーを使ったが,そのうち2つは GPS ロガーと言うよりは,GNSS ロガーという方がいいので,GPS-GNSS ロガーの比較(その1)というサブタイトルを付けておいた。

使用したロガーは,
 (1) Adafruit 社が販売している Ultimate GPS unit
 (2) GlobalTop 社が販売している Gms-g9 ユニットを使った GNSS ロガー1号機,
 (3) GlobalTop 社が販売している Gms-g9 ユニットを使った GNSS ロガー2号機,
 (4) GARMIN 社製のポータブルナビ nüvi 3770V
の4つ(3種類)である。

 今回も念のために3種類のロガーについて書こう。 1つ目は Adafruit 社が販売している Ultimate GPS unitである。 これは MediaTek 社の MT3339 チップセットを心臓部に持つ GPS 受信ユニットであり,シリアル通信でログを吐くので,適当な記録装置があれば GPS ロガーとして使える。 これは GPS 衛星だけでなく,日本の準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System、QZSS)の衛星である「みちびき」の電波を受信でき,さらに,静止衛星を使った補正 (SBAS) の WAAS (USA), EGNOS (EUROPE), MSAS (日本) も使える。 少し前に GPS ロガーを作ってみよう〜♪ という投稿を書いているので,詳しいことはそちらを見てほしい。 2つ目は GlobalTop 社が販売している Gms-g9 unitと,OpenLog, Power Cell を組み合わせた手製の GNSS ロガー である。これは2つ用意したので,1号機と2号機として区別している。 Gms-g9 は MediaTek 社の MT3333 チップを使った GNSS 受信ユニットである。 これはアメリカの GPS 衛星のみでなく,ロシアの GLONASS など他の衛星測位システム (GNSS) 用衛星の電波を使って位置情報を得るものである。 他にも,日本の「みちびき(準天頂衛星システム(QZSS))」の電波や,静止衛星を使った補正 (SBAS) の WAAS (USA), EGNOS (EUROPE), MSAS (日本) も使える(はず)ユニットである。 Gms-g9については, Gms-g9 を使った GNSS ロガーに挑戦してみた GNSS ロガー (Gms-g9 使用) の2号機を作る に書いているので,詳しくはそちらを見てみてほしい。 最後は GARMIN 社製のポータブルナビ nüvi 3770V である。 心臓部のチップセットは不明だが,GPS 衛星を捕捉する能力には定評がある GARMIN 社製である。 これも「みちびき」の電波を受信できる。 ナビなので液晶ディスプレイがあり,地図とセットで現在位置を表示してくれるので,知らない土地を走る時には心強い仲間である。 バイクへのマウントについては数回にわたって投稿を書いた。 具体的なことに関しては,一連の投稿の最後の投稿バイクにナビ作戦(その5):AQUA BOX による防水化 からさかのぼってみてほしい。

 今回も3種類(4個)の GPS/GNSS ロガーを持って,紀伊半島にツーリングに行ってきた。 今回は前回(その3)と同様に国道371号線の酷道区間を走って比較しようと思った。 具体的には橋本から高野山までの区間と,田辺市木守から古座川町平井までの第二分断区間走ってみた。 さらに,林道将軍川線を走り,国道169号線で十津川村竹筒や北山村を通り池原ダム付近を走って帰る,という行程にしてみた。 詳しくは,ツーリングの記録で写真を見てみてほしい。地図上のルートは今回のルートマップで見ることができる。 4個の GPS/GNSS ロガーのうち,ナビの nüvi 3770V を除く3個は,登山用の小さなデジカメ用バッグに入れて,全てアンテナが上を向くように配置して走った。 今回もログをポイントを絞って比較してみよう。 それぞれのログは,適当な処理を施して Google Maps に表示できるようにした。 いずれも点の数が多いので,適当に間引く処理を行なっている。 ここではそれぞれのルートマップへのリンクは省略している。

(1) 国道371号線の田辺市大塔地区付近
Adafruit Ultimate GPS unitGNSS ロガー1号機GNSS ロガー2号機
Garmin nüvi3770V
 この区間は地図の左上(ダム湖)から来て,右上に向かって走った。 いずれも大まかにはルートをたどっているが,地図の一番下を過ぎて右上に向かう部分で差が出ている。 地図は順に,AdafruitUltimate GPS unit を使った GPS ロガー,Gms-g9 使った GNSS ロガー1号機,同 2号機,Garmin 社製ナビ nüvi3770V となっている。 この区間では,2番めに載っている GNSS ロガー1号機が一番いいログを残している。 ほぼ国道に沿ったルートを示し,国道からの逸脱がほとんどない。 他の3個はいずれもこの範囲の最南端(地図の一番下の辺り)を過ぎた付近で,ルートが国道からはずれている。 外れ方には特徴があり,GPS ロガーズレが生じているが,比較的早くにもとのルートに復帰しているが,GNSS ロガー2号機は同じようにズレはじめた後も系統的にずれが残っている。 nüvi3770V は少し送れてずれ始めて,少し暴れ気味のログとなっている。 この区間を見る限り MediaTek 社製の MT3333 チップを使った Gms-g9 が一番性能がいいと言える。

(2) 林道将軍川線
Adafruit Ultimate GPS unitGNSS ロガー1号機
GNSS ロガー2号機Garmin nüvi3770V
この区間は林道を走る区間であり,道が白く描かれているので見にくくなっている。 このルートは右下から左上に向かって走った。 パッと見た感じわかりにくいが,この区間でも GNSS ロガー1号機が一番性能がいい。ログが林道をちゃんとフォローしている。 他の3個はいずれも林道を外れてしまっている。ログが外れているうちでは nüvi3770V が一番マシだった。 それなりに林道に沿ったログが残っている。細かい点ではエラーが生じているが,まぁそれなりにログが取れている。 GPS ロガーと GNSS ロガー2号機はかなり大きく林道から外れてしまっている。 この区間に関しても,やはり一番性能がいいのは GNSS ロガー1号機,ということになる。

(3) 国道311号線近露付近
Adafruit Ultimate GPS unitGNSS ロガー1号機GNSS ロガー2号機
Garmin nüvi3770V
 この区間は左から右に向かって走った際のログである。 ここでは GNSS ロガー2号機のみが大きくルートを外してしまっている。 地図の左から来て,最初のトンネルで衛星を見失ってから,次に衛星を捕捉するまでに時間がかかり,ログがルートを大きくズレてしまったみたい。 ここで一番良かったのは nüvi3770V だった。 何が違うのかはよくわからない。少なくとも GNSS ロガー1号機と2号機は私の製作上の違いがどこかにあると思われる。

(4) 国道169号線十津川村竹筒付近
Adafruit Ultimate GPS unitGNSS ロガー1号機GNSS ロガー2号機
Garmin nüvi3770V
 この区間は地図の下から来て上に向かって走った。 ログを見ると,やはり GNSS ロガー1号機が一番いいログを残している。 GPS ロガーと nüvi3770V は,まずまずのログを残しているが,一部データが乱れている。 乱れる箇所が違っているのは2つの機種のアンテナ性能の違いかもしれない。 また,他と同様にGNSS ロガー2号機が4個の中で一番ログが乱れている。 特に後半(上半分)でトンネルを出た後にしばらく衛星を捕捉しそこねているのがわかる。 GNSS 1号機とと大きな違いはないはずなのだが,何が違うのだろうか?

(5) 国道169号線北山村付近
Adafruit Ultimate GPS unitGNSS ロガー1号機GNSS ロガー2号機
Garmin nüvi3770V
 今回のログ比較では,唯一この区間のみ GNSS ロガーが一番ではない。 nüvi3770VGPS ロガー,GNSS ロガー1号機の順にいいログを残している。 しかし,いずれも言うほど大差はなく,GNSS ロガー2号機のみが少し質が下がっているのがわかる。

今回の結論:これらの結果を総合すると,今回の結果のみから判断する限り以下のことがわかる。 ただし,あくまで1回のログの結果なので,ここでの結果で全てを判断するのは危険であることを念頭に置いておいて欲しい。

(1) GNSS ロガー1号機が一番良いログを残している。特に山の中でもかなり道路に沿ったログを残している。
  このログからだけで判断するのは多少危険だが,基本的に GNSS ロガーの方が GPS のみを使ったロガーよりも性能がよさそうである。
(2) 他の3個の中では,GPS ロガーと nüvi3770V は同程度の結果を残している。
  しかし,道から外れる具合は異なっており,GPS ロガーの方が比較的道の形を再現しながら,
  しかし横にずれている,という感じになっている。
(3) 同じ GNSS ロガーなのに,2号機の性能が1号機よりも大きく劣っている。
  この違いはまだ判明していないが,1号機の GNSS チップを載せているユニットは高周波向けのメッシュアースの
  ガラスエポキシ基板を使っているが,2号機は別素材のスルーホール基板であり,もしかしたら
  電源+microSD 部の Microcontroller 付近から出るノイズの影響を受けているのかもしれない。
  また,2号機 GNSS ユニットの Tx, Rx ラインが Gms-g9 への電源ラインをまたいでいるため,電源にノイズが入るのかもしれない。
  これに関しては,2号機を改造して再びテストしたいと思っている。

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