2016年11月27日日曜日

六甲全山縦走を達成するには

この次に神戸市主催の六甲全山縦走大会での六甲全山縦走についてというのを書いた。そちらも見てみてほしい。

六甲全山縦走路については,以前書いた地理院地図で六甲全山縦走路の登山道が修正されていたや,そこから辿れるページを参考にしてほしい。

 六甲全山縦走は,神戸市によると公称56km,神戸市発行の地図だと53km,GPS と地理院地図によると 45km の距離と 3500m を越える累積高度の上りと下り(地理院地図の標高APIを用いた場合の計算値)を含むルートを1日で歩き通す,というものである(と私は思っている)。この,山道を含めた 45km はかなり長い距離であり,歩き慣れていないハイカーにとってはとてつもなく長い距離である。そのため,初めて六甲全山縦走を達成するにはある程度の準備が必要である。今回は,その点について考えてみよう。

まず,六甲全山縦走に必要なものや条件について考えてみよう。以下が私が考える六甲全山縦走に必要なものや条件である。
 (1) 六甲全山縦走路に関する知識
 (2) 適切な道具や食料,飲料(途中で買うなどしても構わない)
 (3) それ相応の脚力と体力
 (4) 極力止まって休憩しない
 (5) 諦めの悪さ
だと思う。

(1) の六甲全山縦走路に関する知識は重要である。そもそも,どこからどこまでをどのようなルートで歩くのか,どこにトイレがあり,どこに飲料の自動販売機があり,どこに食料を買えるお店があるか,などの情報がないと,実際の六甲全山縦走の際に困ることになる。場合によっては,六甲全山縦走を途中で断念せざるを得なくなる。ルートに関する地図は,神戸市発行の六甲全山縦走マップを手に入れることができる。また,インターネット上にも地図や沿道の写真などの情報が見つかるので,それらを見て,ルートや時間配分などについての知識を得ておくのが必要であろう(こんなページもあります)。ただし,古い情報は現状と変わっているかもしれないので,古い情報には注意が必要(例えば,丸山のデイリーヤマザキは2016年秋時点では閉店している。代わりに少しコースをはずれるが「〒653-0875 兵庫県神戸市長田区丸山町2丁目1−21」にファミリーマートがある)。さらに,できれば実際の六甲全山縦走路を4分割や3分割で歩いてみて,トイレの場所などルートの様子をしっかり把握してから全山縦走に挑戦するのがよい。一応,大雑把な完走時の時間配分を書いておくと,12時間で完走をするなら,
 ・須磨浦公園ー鵯越駅:3時間
 ・鵯越駅ー摩耶山掬星台:4時間
 ・掬星台ー東六甲縦走路分岐ー宝塚宝来橋南詰:3時間 + 2時間
であろうか。12時間はそれなりに厳しい時間なので,もう少し余裕を持って13時間半での完走なら,
 ・須磨浦公園ー鵯越駅:3時間半
 ・鵯越駅ー摩耶山掬星台:4時間半
 ・掬星台ー東六甲縦走路分岐ー宝塚宝来橋南詰:5時間半
となる(あくまで目安だが…)。

(2) の道具に関しては,各人の好みがあるが,少なくとも歩ききるのに必要な食料と飲料,レインウェア,タオル,場合によっては着替えなどが必要となる。また,多くの場合は暗くなってからも歩かないといけないので,ヘッドライトと予備電池が必要である。ヘッドライトは,事前に短い距離でもいいので暗い時間に山道を歩く練習をしておくと安心である。さらに,季節によっては寒い場合もあり,防寒着が必要となることも多い。
 荷物は全体として軽いに越したことはない。しかし,途中で飲み物がなくなると辛いので,このあたりに関しては,事前にトレーニングで山を歩く際に自分なりのパターンを見つけておくのがよいと思う。一番いいのは,六甲全山縦走路を分割して歩く練習を事前に行って,その際に自動販売機の場所などを把握しておくことだと思う。ただし,六甲全山縦走大会の日は多くの参加者が歩くので,時間帯によっては買いたいと思っていた自動販売機でスポーツドリンクが売り切れていたりするので要注意である。

(3) の脚力と体力については,45km を歩き通すにはそれなりの体力が必要なのは言うまでもない。しかし,事前にどこまで体力があればよいかは,六甲全山縦走を達成しないとわからないかもしれない。そこで目安として挙げるとすれば,六甲全山縦走の1ヶ月前から2週間前の間に 25km ないし 30km の山道を歩ける,というのが挙げられる。距離的に似ているマラソンの場合,42km を完走するには,事前にできるだけ 30km を走っておく方がよいと言われる。六甲全山縦走も同様に,45km の山道を歩き通すには,事前に 30km 程度の山道を歩いておくのがよい。それにより,それ相応の脚力があるのがわかるし,事前のトレーニングにもなるからである。場所としては,できれば事前のルート把握などの意味も含めて,六甲全山縦走路の菊水山,鍋蓋山,摩耶山を含むコースを歩くのがベストだと思う。
 ちなみに一週間前に長い距離を歩くのは避けた方がよい。疲れが残ってしまい,本番でかなり辛い行軍になる可能性が高いので。

(4) の休憩時間だが,六甲全山縦走路を歩くと,山頂に着く度に休憩したくなる。天気が良ければ景色もいいし,一服したい気持ちはわかるが,例えば 10分の休憩を6回入れたとしよう。すると,それだけで1時間かかってしまう。実際に12時間で歩いていたとしても,達成に13時間必要となる。もしそこに20〜30分の休憩を1回加えると,休憩だけで1時間半となり,達成にかかる時間は13時間半になる。もし,歩くのにもう少し時間がかかれば,全山縦走を踏破する時間が14時間,15時間に伸びてしまう。そうなるといくら日が長い季節でも必ず暗い時間の歩行があり,遅くなればなるほどその時間は長くなる。そのため,休憩時間は極力短くするのが,六甲全山縦走をするためのポイントとなる。一つの手としては,上りが終わった後の平坦な道やゆるい下り坂で「歩きながら飲んだり食べたりする」というものがある。それにより止まっている時間を減らす作戦である。しかし,上りで足がすごく疲れて休憩したい時もある。私の場合,そんな時は,上りが終わった後の平坦な道やゆるい下り坂で「歩きながら足の疲れを取る」という作戦を使っている。まぁ,平坦なとこで「足の回復を期待して,単に歩いている」だけなのだが…。しかし,完全に止まってしまうよりは,ゆっくりでも歩いている方がいいと思う。完全に止まると次に動こうと思っても動けなかったりするので。

(5) 諦めの悪さに関しては,私の個人的な経験に基づいている。私が六甲全山縦走のために歩き始めたのは2014年の秋である。はじめは神鉄の鵯越駅から摩耶山掬星台を目指した。その時は菊水山でもうあかん,と思った。しかし,そこで帰るのも嫌だなぁ,と思い,とりあえず鍋蓋山まで,と思って,ヘロヘロになりながら歩いた。そして鍋蓋山を過ぎて市ヶ原に下っている間に少し元気になってきたら,ハーブ園への入口ぐらいまでだけ頑張ってみようと,思った。あの区間もしんどかったなぁ。しかし,ハーブ園への入口(世継山分岐)まで来ると,せっかくだから摩耶山には登っておきたいなぁ,と思い始めた。要は「諦めが悪かった」のである。引き返すのが悔しい,とかではなく,引き返すのがめんどくさい,という感じだった。知らない道で迷った時にはやってはいけないことなのだが,道ははっきりしていたので心配はなかったし,せっかくここまで登ってきたし下るともったいないなぁ,という感じだった。そんなこんなで諦められずに一歩一歩登っていると,なんとか摩耶山まで登れたのだった。

 その次は2週間後に須磨浦公園から鵯越駅を目指した。あの時は栂尾山の400段階段ですでにフーフー言っていたし,高取山の上り坂では何度も立ち止まって休憩していた。そして,丸山の市街地の舗装路の急な登りでヘロヘロになっていた。しかし,鵯越駅まで来ると,まだ時間が早かったのもあって,せっかくだからと菊水山と鍋蓋山に登ってみようと思った。菊水山や鍋蓋山を上りながらしんどくて来たことを反省していたが,それでも市ヶ原に着くとまだ行けそうに思って,結局掬星台まで登ってしまった。これも諦めの悪さがなせる技だったと思う。

 須磨浦公園から摩耶山まで行けると,それなりに自信もついてくるし,脚力もついてくるので,その2週間後には新神戸駅から宝塚を目指してみた。あの時はあまりしんどかった記憶はない。やはり菊水山から掬星台と,須磨浦公園から掬星台でそれなりにトレーニングになっていたみたい。結果的に2分割での縦走ができたことになり,それならと,さらに2週間後に須磨浦公園から全山縦走に挑戦してみたのだった。

 初めての全山縦走では,菊水山までなんとか頑張ったら,鍋蓋山の上りで完全にエネルギー切れを起こしてしまった。10歩進んでは一息つく,というのを繰り返しながら登った記憶がある。あの時は「鍋蓋山でこんな状態で宝塚に行けるんかいな?」と思いながら登っていた。で,鍋蓋山まで登ると,市ケ原までは少し楽になるので元気がでてきて,そうなると市ケ原でやめるという気はなくなっていて,摩耶山掬星台を目指していた。掬星台に着くと,すごくしんどかったけど,なんとなく宝塚まで行けそう,という気になってきたので,やっぱり諦められずに先に進んで,最終的に宝塚の宝来橋南詰までたどり着いた。ここでも,良く言えば粘り強く,でもほんとの所は諦められずに,最後まで歩いた結果として六甲全山縦走を達成できた。

 いずれの場合も,途中で「もうあかんかも」と思いながらも,そこでやめて引き返そうとは考えずに進んだ結果,目的地まで到達できた感じである。六甲山の場合,特に前半はどこにでもエスケープできるので,ギリギリまで踏ん張ってもなんとかなる,というのもあるが,簡単に諦められずに一歩一歩前へだけを考えて歩いて達成した,という感じである。でも,この諦めの悪さのおかげで六甲全山縦走できたと思っている。知り合いには冗談半分(半分は本気)で言っているのだが,六甲全山縦走は「もうあかん」と思ってからが勝負だと思う。そこからいかに粘り強く(あきらめ悪く)歩き続けるか,で達成できるかどうかが分かれる。友人の一人はトレランをしていて余裕で全山縦走できるが,初めて挑戦した時には自分で限界と決めつけて中断してしまった。後で,やっぱり行けたかなぁ?と反省していた。その時の彼はあきらめが良すぎたみたい。その後全山縦走を達成し,今では何度も全山縦走を楽しんでいるが…。

 2016年11月には,神戸市主催の六甲全山縦走大会で11時間弱で六甲全山縦走を達成できた。途中,チェックポイントの受付開始を待つ時間があったので,単純にそれを引くと10時間10分ほどで完走できたことになる。それでも,毎回栂尾山の400段階段はしんどくて最低1回は立ち止まるし,高取山の上りはフーフー言ってるし,菊水山の上りではヘロヘロになりながら登ってる。毎回,菊水山や鍋蓋山,あるいは稲妻坂や天狗道のどこかで「もうあかん。これで宝塚に行けるんかいな?」と思いながら登ってる。そんな感じでも,2014年秋から13回にわたって六甲全山縦走に挑戦して11回宝塚にたどり着いている(2回は友人たちとの挑戦で,途中雨のため相談の結果,中断した)。きっと皆さんも頑張れば宝塚にたどり着くことは可能なはず。後はどれだけ諦め悪く歩き続けるか,だけかもしれない(諦めの悪さは,場合によっては危険につながるため,いつでも通用する事柄ではないのでご注意を。状況によっては,いさぎよい諦めも肝心です。最終的には自己責任です)。

0 件のコメント: