後でこの続きとして GPS ログの比較(その3) というのを書いた。
私は現在,バイクツーリング時に GPS のログを記録できる機器を3つ持っている。 1つ目は Transystem 社製の TripMate 850 である。 心臓部に MediaTek 社の MT3329 チップセットを使っている GPS ロガーで,小さな液晶表示がある。 2つ目は GARMIN 社製のポータブルナビ nüvi 3770V である。 心臓部のチップセットは不明だが,GPS 衛星を捕捉する能力には定評がある GARMIN 社製である。 GPS 衛星だけでなく,日本の準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System、QZSS)の衛星である「みちびき」の電波を受信できる。 ナビなので液晶ディスプレイがあり,地図とセットで現在位置を表示してくれるので,知らない土地を走る時には心強い仲間である。 バイクへのマウントについては数回にわたって投稿を書いた。 具体的なことに関しては,一連の投稿の最後の投稿 バイクにナビ作戦(その5):AQUA BOX による防水化 からさかのぼってみてほしい。 最後は Adafruit 社が販売している Ultimate GPS unitである。 これは MediaTek 社の MT3339 チップセットを心臓部に持つ GPS 受信ユニットであり,シリアル通信でログを吐くので,適当な記録装置があれば GPS ロガーとして使える。 これも「みちびき」の電波を受信でき,さらに,静止衛星を使った補正 (SBAS) の WAAS (USA), EGNOS (EUROPE), MSAS (日本) も使える。 少し前に GPS ロガーを作ってみよう〜♪ という投稿を書いているので, 詳しいことはそちらを見てほしい。
今回,3種類の GPS ロガーを持って,バイクの2013年シーズン開幕ツーリングに行ってきた。 どのようなルートだったかはツーリングの記録で写真を見てみてほしい。 TripMate 850 と Adafruit Ultimate GPS unit はそれぞれツーリングジャケットの胸ポケットと,バイクにつけている小さなバッグに入れておいた。 いずれもアンテナ部が上を向くように配置しておいた。 シーズン開幕ツーリングの行き先は紀伊半島。それも山の中を走る酷道,険道と呼ばれる道を走った。 その時のログをポイントを絞って比較してみよう。 それぞれのログは,適当な処理を施して Google Maps に表示できるようにしている。 いずれも点の数が多いので,適当に間引く処理を行なっている。 それぞれのログを Google Maps に表示させたものは以下の URL で見ることができる。
・nüvi 3770V のログ
・Adafruit GPS unit のログ
・TripMate 850 のログ
以下の比較では,これら3つの Google Maps 上のログのスナップショットを取っている。
(1) 国道169号線と国道311号線が合流する奈良県十津川村竹筒付近
nüvi 3770V のログ | Adafruit GPS unit のログ | TripMate 850 のログ |
左の写真は奈良県十津川村竹筒付近 |
(2) 和歌山県道229号線の足郷トンネル付近
nüvi 3770V のログ | Adafruit GPS unit のログ | TripMate 850 のログ |
左の2枚の写真はいずれも 足郷トンネルの東側で撮ったものである。 |
(3) 和歌山県道229号線の長瀞橋付近
nüvi 3770V のログ | Adafruit GPS unit のログ |
上記の写真は和歌山県道229号線の小口〜長瀞橋間である。 |
(4) 三重県熊野市の丸山の千枚田付近
nüvi 3770V のログ | Adafruit GPS unit のログ |
TripMate 850 のログ | |
上記の写真は丸山の千枚田。ログが乱れて いる場所はもっと木が茂っている間に道がある。 |
(5) 和歌山県道43号線の狭路区間の那智勝浦町坂足付近
nüvi 3770V のログ | Adafruit GPS unit のログ |
TripMate 850 のログ | |
上記の写真はいずれも那智勝浦町坂足付近 |
まとめると,TripMate 850 GPS 衛星からの電波の捕捉に若干難があった。 もしかしたら多少古いので,装置がへたっているのかもしれない。 あるいは,他の2つは日本の準天頂衛星「みちびき」の電波を受信できるし, 静止衛星を使った補正 (SBAS) の WAAS (USA), EGNOS (EUROPE), MSAS (日本) も使えるので, 比較的うまく衛星の電波を受信できているのかもしれない。 しかし,以前 TripMate850 で取得したログと比べても TripMate 850 のログのバラツキが大きいので, もしかしたら GPS 衛星の運用台数が減るなどして,GPS 電波の具合が悪くなっているのかもしれない。 TripMate 850 は GPS 衛星を捕捉している時は液晶ディスプレイに秒の単位まで時刻を表示してくれる。 そのため,デジカメの時刻のズレを補正するのには大変便利な機器となっている。 その点で言うと nüvi 3770V は秒の単位までは表示してくれないので,デジカメの補正には向いていないかもしれない。 (追記 nüvi 3770V でも世界時計を表示させると秒針が表示された。 ということは,TripMate850 はもうお役御免か???) Adafruit Ultimate GPS unit にいたっては表示機能をつけていないので,デジカメの補正には使えない。 (表示機能をつけようと思うと,全体が大きくなるし,消費電力も増えるので充電池のもちが悪くなりそう)。 nüvi 3770V と Adafruit Ultimate GPS unit のログは優劣つけがたいが, 多少 nüvi 3770V の方が道のフォローがいいような気がする。 しかし,nüvi 3770V のログは nüvi 3770V 自体が点を間引く処理をするみたいなので, デジカメの写真に位置情報を付加する目的だとちょっと点数が少なくなり不満が残る。 そのため,今回のツーリングの記録でも Adafruit Ultimate GPS unit のデータを使って処理をした。 道から大きく外れている箇所は,仕方ないので手動で補正しておいた。
今回のログの質は1~2年前に比べるとかなり悪くなった感じがしている。 結局は瞬間瞬間に捕捉できる衛星の数が少なくなったためだと思うのだが,これってなんとかならないのだろうか? ちょっと調べると MediaTek 社の chip で MT3333 というのがあるらしい。 これは GNSS レシーバーと呼ばれ,GPS (USA) 以外にも,GLONASS (ロシア) や, Galileo (Europe), QZSS (日本) の衛星の電波を捕捉できるらしい。 それって GPS だけよりもええんちゃうの? GlobalTop というメーカーから MT3333 を使った GNSS ユニット Gms-g9 というのも出てるらしい。 これはパッチアンテナがついていて,GPS 版の PA6H と似たような格好をしてるみたい。 しかし,ネットで探してもドイツのネットショップでしか売ってない…。 でもそのサイトからだと送料がめちゃめちゃ高い…。でも気になるなぁ…。
(追記) どうやら2008年以来,太陽フレアの活動が活発になっていて,無線やGPSに影響を与えているらしい。 その太陽フレアの活動は今がピークらしいとのこと。 もしかしたら太陽フレアの影響でGPS等の電波状況が悪くなっているかもしれない。
とりあえず,当面は nüvi 3770V はナビとして使い, デジカメの時刻補正の情報は TripMate 850 を使って得ることにして (追記:上にも書いたが,nüvi 3770V で時刻補正ができそうなので,TripMate850 は無くてもいいかも), 走行経路のログは Adafruit Ultimate GPS unit を使おうと思っている。 nüvi 3770V で時刻補正ができれば TripMate 850 は要らなくなるかもだが…。 しかし,何が起こるかわからないので,そんな時の補完のために nüvi 3770V と TripMate 850 の ログデータも使えるんじゃないか,と思っている。 ちなみに TripMate 850 のログが途中で切れているが, それは単三の充電池を入れ替えるタイミングを間違えたから,である。 電池のもちがよくない,というのも TripMate 850 の短所である。 電源の点では,nüvi 3770V はバイクのバッテリーから取っているので心配ないし, Adafruit Ultimate GPS unit は満充電にしておけば18時間程度もつので,通常は全く問題はない。
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